2014/09/01
胃
の薬には、胃酸ので すぎによる症状を抑えるものがたいへん
多いのですが、その中には、出すぎた胃酸による影響を中和でもって解消する前に、その胃酸の分泌そのものを抑制する成分が少数派あります。そちらを先に学習します。その成
分は ピレンゼピン塩酸塩とロートエキスです。これらの成分は、アセチルコリンの働きを抑えて胃液そのものの分泌を抑制しま
す。 アセチルコリンとは 副交感神経の伝達物質ですが、胃腸の痙攣や胃腸の過剰な運動、胃酸過多や胸やけなどは この副交感神経 により さらに活発化されることがあります。したがって、この伝達物質であるアセチルコリンを抑えてしまい、胃液などの分泌自体を抑え てしまおうというものです。 (ピレンゼピン塩酸塩とロートエキスの うち、ピレンゼピン塩酸塩は) *ピレンゼピン塩酸塩*は消化管の運動に影響を与えずに胃液分泌のみを抑えるという特徴があります。 ですから、ピレンゼ ピン塩酸塩とロートエキスは アセチルコリンを抑えるという点で抗コリン成分に分類されます。 そして抗コリン作用のため 排尿困難や目のかすみ動悸などの副作用もあります。 次に 胃液の影響を緩和するために中和反応をするタイプの成分をあげます。これらは、その作用から制酸剤 制酸成分とい いま す。中和の効果があるのでその物質名を見ればわかるように、電解質の名前が多いのです。 もっとも有名で 中学理科でもでてくる、重曹、つまり 炭酸水素ナトリウムをはじめアルミニウムやマグネシウム、カルシウ ムなどのミネラルの陽イオンとその他の陰イオンが 結合した塩の形をとります。 ただし、アルミニウムを含む塩の成分は 透析治療を受けている人は使用を避けるべきとして特別に覚えましょう。その理由は、アルミ ニウム脳症、アルミニウム骨症の報告があるからです。 このような留意の必要な成分には 乾燥水酸化アルミニウムゲル、ジヒドロキシアルミニウムモノアセテートなどです。 注意が必要なのは、アルミニウムだけではありません。マグネシウム、カルシウムも同様で、とりすぎると、腎臓の弱い人は これ らのミネラルの排泄がうまくいきませんから 高カルシウム血症、高マグネシウム血症になるおそれがあるのです。 というわけで、さらに要注意な制酸成分として、アルミニウムとマグネシウムの両方を含む合成ヒドロタルサイト、メタケイ酸ア ルミン酸マグネシウムがあります。マグネシウム単独を含む制酸成分には ケイ酸マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネ シウムなどがあります。 カルシウムを含む 沈降炭酸カルシウムやリン酸水素カルシウムなどがあります。 生薬である制酸成分には、ボレイやセキケツメイなどがあります。これらは含まれる炭酸カルシウムが中和の効果を発揮すると 考えてよいのです。 いままで紹介した制酸成分は いずれも、服用時に酸性度の高い食品を摂取しているとその効果が低下することはいうまでもあ りませ ん。注意が必要です。 次に紹介する胃腸薬は健胃薬といわれるものです。健胃薬には健胃成分という分類の成分が配合されています。 この成分の特徴は 唾液や胃液の分泌を促すことにより弱った胃の働きを高めるという比較的単純なものです。 とくに生薬の健 胃成分は 苦味や香りの影響でこの効果を引き出すものがほとんどです。 生薬のケイヒ、コウボク、ショ ウキョウ、チョウジ、チンピなどは それらの香りの影響による健胃作用が期待されます。生薬のオウバク、オ ウレン、センブリ、ゲンチアナ、リュウタン、ユウタンなどは苦味による健胃作用が期待されます。カルニチン塩化物なども胃液分泌を亢進し、胃運動の亢進を する作用があるため健胃成分に分類されます。 次のタイプの胃薬は 荒れた胃粘膜を修復したり これ以上ダメージを与えないために保護する役割をする成分です。 そのうち、胃に限らず、一般的な炎症に対して配合される いわゆる抗炎症成分として他の分類の薬にも用いられることが多 く、みなさ んも 何度も耳にした成分2つをあげておきます。 抗炎症成分としての グリチルリチン酸ナトリウム、 と 生薬のカンゾウです。これらも胃粘膜の炎症の緩和 に用いられることがあるので配合されることもよくあります。 もう わかっているでしょうが、これらは その摂取の量が多くなると 偽アルドステロン症を引き起こす副作用があります。 その他、胃ぐすりによく用いられる 胃粘膜の保護成分には、アズレンスルホン酸ナトリウム 別名 水溶性アズレンともいう成分は 青色の成分で 胃腸薬だけでなく、口内炎薬やうがい薬 にも配合されることがあります。 銅クロロフィリンカリウム、銅クロロフィリンナトリウム、は 植物の葉の成分でもあると覚えてください。その他 ムクライ ド、生薬のアカメガシワなどがあ りますが、胃粘膜保護、修復成分として有名なアルジオキサ、スクラルフファートはアルミニウムが含まれるため、透析療法を 受けている人は避けるべきです。 また 胃粘膜の保護、修復成分として代表的なソファルコン、デプレノンは 副作用として肝機能障害、腹部膨満感、はき 気、腹痛などがある場合もあります。 さらに これも、胃粘膜の保護修復成分のセトラキサート塩酸塩は 体内で代謝されるとトラネキサム酸に変化します ので、すでに学んだ人もいるかもしれませんが、トラネキサム酸の 服用時の留意点や副作用と共通の点が多い成分です。具体的には血栓症の人はこれを含む胃薬を飲むことで血栓を起こす可能性が増すこと があるので 医師などへ相談することが必要とされます。 また 胃の不調は 胃や腸などの消化管内容物からのガスの発生により腹部膨満感として現れることがあります。これを解消 するためジメチルポリシロキサン 別名 ジメチコンは 腸内で発生したガスの泡がつぶれやすくする成分なのです。市販薬では 「ガスピタン」や「ザ・ガードコーワ整腸錠」などに配合され ています。 次にあげる胃の薬の成分は消化薬です。これは 炭水化物や脂質、タンパク質繊維質、つまり 栄養分を吸収しやすくするために 分解する ための、 いわゆる消化酵素の補充成分です。 こういった成分の入った薬は食後に胃がもたれる人などが服用するとよいとされます。補充される成分には、ジアスターゼやプロ ザイム、ニューラーゼ、リパーゼ、セルラーゼ、複合酵素とし て、ビオジアスターゼなどがあります。 この中で セルラーゼは セルロースという言葉に 似ていることからも、植物繊維の分解に働く 酵素です。ご飯やパン、麺類などの炭水化物の分解には ジアスターゼやタカジアスターゼが働きます。 肉や魚または 卵やマメなどのタンパク質の分解には プロザイムが働 き肉や魚などの油分、脂質の分解には リパーゼが働くのです。 また複合消化酵素として、 炭水化物やタンパク質の分解にはビオジアスターゼ炭水化物、タンパク質、さらに脂肪の複合消化 酵素としてニューラーゼ、パンクレアチンなどがあります。 今まで紹介した 消化酵素とは別の系統、つまり、胆汁の分泌を促進する成分もあります。具体的には 胆汁末、動物胆、など です。 ただし胆汁の分泌を促すウルソデオキシコール酸には要注意です。というのは 退治毒性があるとされ妊婦は使用をさけるべきと されているからです。ちなみに、胆汁の分泌を促すことを利胆作用といいます。また さきほど解説した、ジアスターゼやプロザ イム、リパーゼなどの消化を助ける酵素の成分は、肝臓病の診断を受けた人で は症状を悪化させるおそれもあるので注意が必要です。 |